読書状態: | 読み終わった | 期限日: | |
カテゴリ: | Web | 購入費: | 821 円 |
テーマ: | デジタルアーカイブ | 入手日: | - |
タグ: | 読了日: | 2014/11/04 | |
公開度: | 公開 | 評価: | |
■ 蔵書メモ
ネットで断片的に目にしていたあれこれの言葉をコンパクトに整理し、かつ今後、日本が向かうべき方向について提言してくれている本。デジタルアーカイブを巡る世界と日本の動きの大まかな見取り図が理解出来た。「孤児著作物」や「肖像権」の問題は、著者の提案のように解決されるとよいと思う。
少し悩んだのは、著者の提案通り、国立のデジタルアーカイブセンター(NDA)がデジタル化工房中央センター兼統一ゲートウェイでいいのか、という問題。「国立」という部分に若干の危惧が。つまり、時の政府にとって都合の悪いデータが、焚書ならぬ焚データされないか、つい心配してしまうのだ。原本は別の機関が持ってるから大丈夫とか、ゲートウェイならデータは別機関にも存在するとか、あれこれ考えてしまう。
災害対策や不慮の事故予防ならデータの分散を、「焚データ」対策も、あちこちに情報を分散させておくということか。中央集権という意味では、つい、「日本史資料センター」問題とか連想してしまう。まあ、デジタルアーカイブ以前に、「国家」というものに根本的な疑念があるのが、私自身の個人的課題か。でも、本書はそのあたりの危惧をすっ飛ばして書いているようにも読める。国から予算を取ってくるには、こういう書き方も戦略として必要なんだろうな、とも。ご本人の人となりが窺えるのは、サンデル教授の授業に対する家族の反応の部分だけのようだ。
【2014/11/5追記】
大事なことを思い出したので、追記すると、違和感を感じたのは巻末の「提案10 無料字幕化ラボ」の部分。「そこに作品データを送れば、無料で英語字幕や英語での説明を付けてくれるのです。もちろん無料ですからレベルはそこそこです。・・・品質的には、友人に翻訳を付けてもらったくらいに考えるのです。・・・スタッフには、控えめな報酬で働いてもよいという翻訳者やその卵、そして各国の留学生を募ります」(231-232頁)とある。翻訳はそもそも労多くして功少ない仕事だと思うが、「そこそこ」に誤訳されて拡散する危険性、「控えめな報酬」って、それ、最低賃金との関係はどうなるのだろうか、とか、首を傾げた。根底には、翻訳だけでなく、「データ入力などの地味な作業とボランティア」という多元的な価値観がせめぎ合う世界があると思う。本書の冒頭には、「富田倫生に―その心意気に」が掲げられていて、筆者のスタンスは明確だが、デジタルアーカイブという「大義」の前に埋もれがちな個々の作業のほうに、私としては、つい目が向いてしまうのだ。
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