読書状態: | 読み終わった | 期限日: | |
カテゴリ: | 歴史 | 購入費: | 907 円 |
テーマ: | ヨーロッパ史 | 入手日: | - |
タグ: | ベルギー, | 読了日: | 2015/04/04 |
公開度: | 公開 | 評価: | |
■ 蔵書メモ
オランダとベルギーへ行くときに読もうと思って持って行った本のうちの一冊。結局、現地では読めずに、帰路の飛行機と帰国後に読み継いだ。美術館巡りが中心だった旅ではほとんど気付かなかった意外な歴史が描かれていて、ベルギーの人たちは大変だなと思った。
ヨーロッパ史は苦手である。高校時代、ゲルマン民族の大移動のところで世界史は挫折したが、この本もベルギー前史のところが難解である。しかし、フランク族の侵入により、ローマ軍がベルギカを東西に走る軍用道路まで退却し、北部にはフランク族が植民し、この軍用道路がその後ゲルマン(フランデレン)とローマ(ワロン)を分かつ「言語境界線」となっていく(7-8頁)。この4世紀頃の出来事が、現在までの北部オランダ語圏と南部フランス語圏を形成し、それが故の葛藤と分裂危機として現在に至っているとは、驚くべき話である。言語と民族の違いとは、そこまで根強いものなのか。
この本の面白いのは、先ず、「自治都市」の発生についてである。12~13世紀、フランドル伯領は、布地をバルト海や地中海沿岸へ売る商業の中心地となった。マルクト(市)は商人たちが旅路の途中で「市」を開いて商売をした、その名残である。この「市」を起点に人々が集まり、商人を中心とする共同体である「都市」が発展していったとのことで、これが「自治都市(コムーネ)」の形成である(16頁)。これはブリュッセルやブリュージュで立派なマルクトを見てきた直後なので、おおーっという感じだ。
続いて、ブリュージュの公文書館の中にある「自由ブリュージュ博物館」がなぜ、カール5世をたたえる(「地球の歩き方」の記述による)のかよく分からなかったのだが、本書を読むと、相続と選挙によりスペイン王カルロス1世が、1519年にブルゴーニュ、オーストリア、ネーデルラント、スペインにわたる大帝国の皇帝、カール5世になった、とある。カール5世は現在のベルギーのヘント(ゲント)の生まれなので、ベルギーが輩出した大帝国の皇帝なのだ。戴冠はドイツのアーヘンということだから、「自由ブリュージュ博物館」がなぜ、という問題は、本書を読んだだけではよく分からなかった。この時代はルーベンスが活躍した時代で、かつ、スペイン統治に反抗的だったブリュージュに代わってアントワープが貿易港として発展したという(17-18頁)。
フランス革命を機に、ベルギーは1790年に新憲法を採択し、ベルギー共和国の独立を宣言、しかし、たちまち、オーストリア軍に制圧されてしまう。1795年にはフランスに併合され、オランダ語の使用が禁止される。ウィーン会議によって、ベルギーはオランダ領とされる。オランダの言語政策はフランス語を母語とするワロンの人々の反発を招き、またベルギーの人々への重税等が不満を招き、自由主義派と保守派は「同盟」を組織する(25-33頁)。
1830年、独立革命を遂げたベルギーは、オランダとの調停を求め、5大国(オーストリア、ロシア、プロイセン、イギリス、フランス)に国際会議の招集を要求、ロンドン会議が開催されるが、ここでは「誰をベルギーの君主とするか」が問題となった。ベルギーの人々は君主を置くことに嫌悪感を持ち、共和制を望んでいたが、他の君主たちにとって革命は恐怖であり、共和制の成立を当時の周辺の君主国が許さなかった。従って、ロンドン会議に集まった5大国は国王を立てることを交換条件にしてベルギーの独立を承認した(38-44頁)。何とも気の毒な話である。
本書はここから、歴代の君主や政権、言語問題に入っていく。次に愕然としたのは、2代目国王レオポルド2世のコンゴ獲得である。レオポルド2世はコンゴを個人所有の国とした。ベルギー政府と議会は人道的見地から植民地政策に乗り気ではなかったが、ベルギー財界は大いに潤い、多くの植民地財閥が誕生した。国王と財閥によるコンゴ支配は残虐で、レオポルド2世は、「有色人種は怠惰で、暴力で支配する必要がある」と考えていた(76-78頁)。有色人種である私は、ここで強い不快を感じるのである。コンゴが独立できたのは、1960年のことであり、ベルギーがその後も介入を続けたため、コンゴ動乱が、また第一次大戦後にドイツから獲得していたルワンダでも内戦により人類史上稀に見るジェノサイドが発生する(135-140頁)。ここを読むと、ベルギーという国の負の側面を見てしまうことになる。
その後の本書では、言語問題と分裂の危機を中心に、国王と政党政治の変遷、連邦制の導入についての記述が続く。君主制自体の見直しや、共和制を導入しようという議論も現在まで続いているようだ。そして何より、何か不満があると大規模デモが打たれるようで、そこのところが日本とは違って面白い。
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